The First Drop の最大の特徴は、
AI を使ったプロジェクトでありながら、
その“最初の一滴”は 完全にアナログな手作業から始まっている という点です。
私が東京藝大の公開講座で制作した
1つのキュレーションボックス。
それがすべての出発点でした。

小さな箱の中に、
紙片、写真、言葉、断片的な素材を選び抜き、
自分自身の記憶や感覚を封じ込めていく—
この 物質性と身体性のある“手仕事” が、
WEBメディア版の「The First Drop」の起点です。

シュレッダーの紙くずを100円ショップのプラケースに詰め込んだ。
■ アナログの「最初の一滴」から、AIとの共同制作へ
アナログのボックスを作りながら、
私はそこに AIとの共同制作 を加えました。
これは、「人間とAIの境界」と言うテーマを表現するためです。
講義の参加者の方からは「なぜAIを使うのか?」という質問もありましたが、
「AIを使うこと」が必然のテーマだったからです。
- 生成AIによるイメージ
- テキストの断片
- 視覚と言葉が交差する“しずく”
- 境界を曖昧にするメディア表現
アナログの起点を
AIの生成力で拡張する。
この “人間→AI→人間” の往復運動そのものが、
「The First Drop」の作品性そのものになっています。

AIと壁打ちしながら共同作業で「詩」を作った。
■ デジタルが溢れすぎた世界で、私は意味を見失った
今の世界では、
デジタル写真が日々無数に撮れ、
インスタを中心とした SNS のタイムラインには
画像・動画・AI生成物が際限なく流れ続けます。
そこには
「大量であること」以外の意味が
ほとんどなくなってしまった。
私はその洪水の中に
もはや価値や意味を見出せなくなっていました。
- 写真の価値はどこにある?
- 画像とは何か?
- 人が“作品”として受け取るためには何が必要なのか?
- アートとは何を指すのか?
この“意味の喪失”が、キュレーションボックスから展開させた、
WEBメディアとしての、「The First Drop」を作る動機になっています。
■ だからこそ、アナログとAIをつなぎ、
「ストックとして耐えるメディアアート」に再構築した
このWEBメディア版の「The First Drop」 は
流れて消費されていく SNS とは真逆の方向にあります。
ここで扱うのは
「タイムラインを流れて消える画像」ではなく、
ストック(残るもの)としての断片 です。
- アナログで作ったもの
- AIで生成して拡張したもの
- 記録として残すもの
- 反応の“最初のしずく”が落ちる場所
これらを WEBサイトとして構築することで、
大量消費されない “意味の棚” をつくった のです。
どれだけ多くの人に見てもらえるのか、というアクセス数よりも、
ほんの僅かな方に、深く感じてもらえればいい…
そんな気持ちで、
The First Drop は、
膨大なメディアが流れ去る世界とは対照的に、
しずくのように小さな断片を
「置く」
「蓄積する」
「鑑賞する」
という形式へと再配置しています。
アナログなシュレッダーの紙くずをAIで動画にした。これは、「電気羊」を表現するために作ったもので、紙屑は人間の記憶。
生成AIを使って画像や動画を作る、ということが簡単になった今、何を創るべきなのか?
SF小説に着想を得た動画を作ってみたところで、オリジナリティは無く、自己満足以外に何の意味があるのか?
SNSに流す消費される単独の動画、では、意味がないと考えた。
■ メディアアートとしての位置づけ
“アナログ起点のAIメディアアート”
このプロジェクトは、
アナログと AI、
手触りと生成、
記録と変化をつなぎ合わせる
アナログとデジタルの”ハイブリッド・メディアキュレーションアート” と呼べるものです。
メディアが氾濫する現代において、
「本当に意味を持つ画像・言葉とは何か?」
「感性と知性が揺れる場所とは何か?」
「AIが生むイメージは作品たりえるのか?」
こうした問いを、
実践と作品のかたちで提示する試みです。
■ 最後に─The First Drop とは何か
The First Drop は、
アナログの箱から始まり、
AIとの共生成によって拡張され、
デジタル世界の“意味の洪水”に対する
小さな批評として生まれた
メディアアート作品です。
大量生成・大量消費の時代だからこそ、
「しずくのように小さく、
ゆっくり味わえるものを残す」という
逆方向の価値を、
このプロジェクトは大事にしています。
そして、単独で見ただけでは見えてこないコンセプトを、
WEBの中で一本の糸でつないでみる、そんなアプローチを試みた
小さなメディアアートの実践です。
最後に…
生成AIを使ってはいますが、手作業での合成やAIとの度重なる壁打ち作業といったアナログな作業も膨大に行っている点を記しておきます。

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