アートに革新性は必要か?~アーサー・ダントー他

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アート議論に重要な視点を提示した有名な書籍

アートとは何か?このテーマについては多くの議論がなされてきたテーマですが、現在、美術界で大きな影響力がある書籍とされているものを調べてみました。
これらの書籍は、アートにおける革新性やその役割に関する議論を深め、現代のアート批評や実践に強い影響を与えていると思われます。
これらは、気軽に読めるないようではないかもしれませんが「アートとは」というテーマが気になる方は、読んでみてはいかがでしょうか。

1. 『アートの終焉 (The End of Art)』 — アーサー・ダントー (Arthur Danto)

  • 影響: アーサー・ダントーの『アートの終焉』は、現代アートにおける革新性やその意味についての最も重要な著作の一つとされています。
    ダントーは、アートが「終わった」とは、従来の革新性の追求がもはや重要ではなくなり、アートの本質が思想や社会的文脈に移行したことを意味しています。
    この考えは、特に現代アートの枠組みを理解するために重要です。 ダントーの理論は、アートの歴史とその変化に関する新たな視点を提供し、今もなお多くの美術批評家やアーティストに影響を与えています。

    この本の詳細は、後述します。

2. 『アート・アンド・カルチャー (Art and Culture)』 — クレメント・グリーンバーグ (Clement Greenberg)

  • 影響: クレメント・グリーンバーグの『アート・アンド・カルチャー』は、モダニズムとその革新性に対する重要な理論書です。
    グリーンバーグは、アートが自己表現を追求し、常に革新を必要とするという立場を強調しました。
    彼のモダニズム理論は、今日のアート界にも深い影響を与えており、特に抽象表現主義やその他のモダニズムのアートを理解するための基礎となっています。
    グリーンバーグのアプローチは、革新性とアートの自己目的性に関する議論を今でも活発にしています。

3. 『ポストモダン・アート (The Originality of the Avant-Garde and Other Modernist Myths)』 — ロザリンド・クラウス (Rosalind Krauss)

  • 影響: ロザリンド・クラウスの『ポストモダン・アート』は、アートにおける革新性や前衛的な運動に対する批判的な視点を提供します。
    彼女は、革新性が必ずしもアートの本質ではないとし、モダニズムの神話に挑戦しています。
    この本は、ポストモダンアートやその批評に大きな影響を与え、今日の美術批評やアート理論における重要な参考書として位置づけられています。

4. 『文化の社会学 (The Sociology of Culture)』 — ピエール・ブルデュー (Pierre Bourdieu)

  • 影響: ピエール・ブルデューの『文化の社会学』は、アートと文化の社会的な生産における革新性について考察する重要な書籍です。
    ブルデューは、アートの革新性がしばしば社会的な力関係と結びついていると論じ、アート市場や権力構造との関連を深く掘り下げました。
    この書籍は、アートの社会学的な理解を深め、アートが商業的な要素とどのように絡み合っているのかを示すため、現代のアート界でも高く評価されています。

5. 『アート・アンド・カルチャー』 — ハロルド・ローゼンバーグ (Harold Rosenberg)

  • 影響: ハロルド・ローゼンバーグの『アート・アンド・カルチャー』は、アクション・ペインティングや抽象表現主義の発展における革新性についての議論を行っています。
    彼の理論は、アートが自己表現の場であり、革新性が生きた行為として表現されるべきだという視点を提供します。
    このアプローチは、現代アートにおける「アクション」や「プロセス」の重要性を強調し、今日のアート実践にも大きな影響を与えています。

これらの書籍は、アートにおける革新性の必要性やその概念を議論する上で最も影響力があるものとして、現在でも多くのアート理論家や実践者に読まれ、評価されています。
それぞれの書籍が提供する視点は、アートの進化や現代美術の理解に欠かせないものといえるでしょう。  

ダントーの「アートの終焉」とは

アートは終わったのではなく、自由になった


アメリカの哲学者アーサー・ダントーは、
「アートの終焉(The End of Art)」という刺激的な言葉を残しました。

けれど彼が言いたかったのは、
「もうアートがなくなる」という話ではありません。

むしろその逆です。
彼の主張は――

アートは進化の物語を終え、どんな表現もアートになりうるほど自由になった。

というものでした。


アートは“見た目”ではなく“意味”で決まる

ダントーは、デュシャンの《泉》(便器を展示した作品)や
ウォーホルの《ブリロ・ボックス》(洗剤箱の模造品)を見て、
アートの本質を問い直しました。

「アートかどうかは、見た目では判断できない。」

大事なのは、
「それがどういう考えのもとに作られたか」
「どんな文脈の中で提示されたか」。

つまり、アートとは意味を持つ行為なのです。
この考えをもとに、ダントーは

「アートとは、意味を体現するものである」
と定義しました。


「終焉」とは“自由の始まり”

ダントーが言う「終焉」とは、
アートが「上手に描く」「新しい様式を作る」といった
目的を追い続ける時代が終わったということ。

「もはや、どんなスタイルも可能であり、どれも必然ではない。」

この言葉の通り、アートには“正解”も“王道”もなくなりました。
写実でも抽象でも、AIでもパフォーマンスでも――
考えさせる表現なら、すべてアートになりうる

それが、ダントーの言う「終焉以後の時代」です。


一方で、批判もある

もちろん、この考えに疑問を投げかける人もいます。

  • 「それは西洋のアート史だけの話では?」
  • 「何でもアートになってしまえば、アートの意味がなくなる」
  • 「“アートワールド”という専門家の世界が決めるのは不公平だ」※

たしかに、アートの境界を広げすぎると、
「アートとは何か」がかえって見えなくなってしまう危険もあります。

※ダントーが「制度がアートを規定する」として、アートエリートだけがアートを評価できるかのように主張した、と読むのは、誤読だとされています。ただ、現実の現代アートには、ダントーの意図したこととは異なり、アートワールドにより、アートと大衆が分断される、という流れができているという課題が指摘されており、近年は「アートワールド」を構成するアートフェアや美術館にも、この分断を埋める取り組みがみられます。


まとめ:アートは「問い続ける」時代へ

ダントーの理論は、アートを誰もが自由に考えられるものにしました。
けれど同時に、私たちは問われます。

「では、あなたにとってアートとは何か?」

彼の言う「終焉」とは、
アートが“終わった”瞬間ではなく、
誰もがアートを問い直す時代の始まりなのです。


 一言でまとめるなら:

「アートの終焉」とは、
アートが“終わった”のではなく、革新性だけを求めるような文脈主義から解放されて、“自由になった”ということ。
そして、私たち一人ひとりが“アートをどう見るか”を問われています。

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