藝祭 2025

「たまゆら」訪問レポート

アートと熱気が交差する「たまゆら」の記録と作品との出会い

Title:「Untitled」(平田守さん)

初日は台風、私は二日目に訪問

東京藝術大学の学園祭「藝祭2025」。今年のテーマは「たまゆら」。
初日は台風で断念しましたが、翌日の土曜日に訪れることができました。キャンパス内外は想像以上の賑わいで、人の熱気に包まれていました。
実は私、この年になってようやく時間ができ、やっと足を運ぶことができました。長年気になりつつ行けなかったイベント。キャンパスに足を踏み入れた瞬間、熱気と人の波に「あ、これは想像以上だ」と圧倒されました。

神輿—キャンパスの外に広がる迫力

実際には初日もどうにか開催されたようで、後からYouTubeでその様子を見ました。雨の中で神輿を担ぐ学生たち。映像越しでも迫力が伝わってきて、「いや、これは現地で見たかったな…」と思う一方、「本当にお疲れさまです」と素直に感じました。

藝祭2025開口一番(「書家うどよし」さんのYoutube)

2日目の土曜は門の外の道路に、大迫力の神輿が4基並んでいました。
どれも学生が制作したとは思えないほどの造形美で、近づくだけで圧倒されます。さすが藝大生!!

ガイドブックを記念に購入

会場ではガイドブック冊子(1000円)を購入しました。


道路に展示されていた神輿、「こんなのどうやって作っているんだろう?」と驚いていたのですが、購入したガイドブックをめくってみると、「神輿ができるまで」という紹介ページがありました。
そこには、1年生がひと夏をかけて苦労して制作する過程が写真付きでまとめられていました。展示を見た後に裏側を知ると、迫力だけでなく、汗と努力が込められた作品であることが一層伝わってきます。——「本当にお疲れ様です」と心の中でつぶやきました。


作品や展示の情報がまとまっていて便利なのはもちろん、後から思い返すための記念品としても嬉しい一冊です。藝祭を訪れる方にはおすすめです。

近くで見ると、迫力が増します。

絵画棟を巡る—8フロアの圧倒的展示

私が足を運んだのは絵画棟。8フロアすべてが展示会場となり、さすが藝大と唸る作品が並んでいました。
シニアの私には全作品をじっくり見るのはとても無理。それでも「藝大生の今」を映し出す作品群に圧倒され続けました。


8階には梯子に登って外から覗く部屋があったのですが、列ができていたので、後で入ろうとスルーして一度外に出たのですが、遅い食事をとって疲れて休憩している間に終了時間に。結局見られなかったのが心残りです。

絵画棟で一番驚いたのは、人間マンホールになって横たわっていた女性の方の作品でした。
自らを作品の一部にするパフォーマンスアートは、現代アートの展示会などで見たことはありますが、「マンホールになってしまう」という発想とその姿には、やはりインパクトがありました。長時間その状態を続けていたことを思うと、「本当にお疲れ様です」と声をかけたくなるほど。

 

何を表現していたのか伺いたかったのですが、行列に沿って無言で通り過ぎるだけで精一杯。

若い女性の方でしたし、壁には「ギャラリーストーカーに注意」という貼り紙も多く見かけたので(笑)、あえて声をかけずに立ち去りました。

 

なぜ、ロバート秋山さんが呼ばれたの!?~なるほど納得の面白さのYoutube

展示を見続けていたら、昼食を逃してしまい、外に出たのは15時半ごろ。

特設ステージの前を通りがかると、ゲストトークショーが行われていました。


予約が必要なので見れませんでしたが、ゲストはお笑いトリオの、ロバートの秋山さん。

遠くにちらりと見えましたが、どんな話題だったんでしょうね。


どうやら、Youtubeでクリエイターさんを紹介するチャンネルを持っている関係で呼ばれたみたいです。なるほどね。

この動画とか、メチャクチャ面白いですからね。


「村上隆二(過去アーティスト)世界の村上隆に影武者?ふたご?!」

印象的だった2つの作品

絵画棟の8フロアだけでも、膨大な作品でしたが、そんな中から、大学の公開講座に参加した際のサポートスタッフとしてお知り合いになっていた方と、たまたま、ご本人からのご説明・掲載許可を頂けた方、というご縁による、2つの作品をこちらでご紹介させて頂きます。


どちらも「たまたま」ではありますが、自分の感性にマッチして面白いと感じられた作品でした。

作品その1:平田守さんのインスタレーション

東京藝術大学の2025年の公開講座「今日の美術を楽しむ」に参加した際のサポートスタッフをしてくださった平田さんの作品です。

 

展示室で再会し、ご本人から少しだけコンセプトをお教えいただいたのですが、年のせいもあり完全には覚えきれず、誤って伝えてしまうといけません。

現代アートは、むしろ解釈の余白を楽しむものでもありますので、ここでは作品の説明は避け、写真だけ掲載させていただきます。スマホで撮影するとLEDがチカチカ点滅して映る仕掛けがあり、「カメラ越しだとチカチカ見えるLED」を意図的に選んでいるとのこと。肉眼ではわからなかった点滅がカメラ越しに見えると、何か神秘的な感じです。

白い壁の背景に白で9面のボードで構成してあること、右側の3面は角度がついて手前に折れていること、写真ではわかりづらいですが、ボードの表面に塗料のしずくがついたようなもの、木材の上に載せてあること…など、あるコンセプトに基づいて制作されている作品です。
インスタレーション的なコンセプチュアルアートなので、何かの表現であるのは当然と言えば当然ですが、ビジュアルだけみていても面白い作品です。

これが何を表現した作品なのか、また完成作品が気になる方は、ぜひ今後開催される平田さんの個展で体験してみてください。

Title:「Untitled」(平田守)
素材:木製の変形パネルにマウントした混紡キャンバス、LEDロープ、ジェルメディウム、複数のクランプ、蝶番、杉の柱材

作品その2:鈴木詠士さんの不思議なゲーム機と精緻な油彩画

もうひとつは、絵画棟7階で出会った作品。作者ご本人が会場に立たれており、直接お話を伺いながら鑑賞できました。

展示されていたのは、透明なケースに電子部品を組み込んだ不思議なゲーム機。ボタンを押してもタイムラグがあり、思うように操作できず、もどかしさを体験することが目的のゲーム機でした。通常のゲームが「快感」を目指すのに対し、「うまくいかない感覚」そのものを作品化している点がユニークでした。

さらに壁には、精緻な油彩画が展示されていました。まるでCGのように緻密に描かれたライフルやエアガンの分解図。その一つには小さな蜂が数匹描かれており、作品タイトルは「擬態」。武器と生物が共存する不思議な世界に、思わず見入ってしまいました。

機械仕掛けの作品と精密な油彩画の両方を生み出せるマルチな才能。「今回はゲーム機と絵の関連はないものでしたが、今後は関連させた作品も構想中です」と話す鈴木さんの言葉が印象に残りました。
メカニカルな造形と生物的モチーフを掛け合わせた絵の世界観や不思議なメカニックの面白いテーマ、私は大好きです。

Title:「ゲーム<299792458m/s」(鈴木詠士)
リレー、可変抵抗、モーター、ソレノイド他(2025年)

人を苛立たせる「遅延」を主体にしたゲーム。
因果の時間差。
紙に書かれた、より高い点数に黒点を落とした方が勝ち。
リレーが遅延するため狙って打つのが難しい、というゲームです。なるほど、イライラしますね(笑)

Title:「M4A1」(鈴木詠士)
キャンバス、アクリル、油彩
910×1620mm(2025年)

Title:「擬態」(鈴木詠士)
キャンバス、油彩
727×606mm(2025年)

【作者の説明文より】
エアガンの外装の物騒なイメージは模型にすぎず、形状の根拠は薄い。
対して内部メカは、その陳腐な機能を実現するのに忠実な機構を持っている。

筆者の個人的な視点~「擬態」について ― 武器と生命のはざまで

分解されたエアガンを油彩で精緻に描き、その周囲を飛ぶ蜂。
無機質な武器と生命の象徴という対置。銃は「自由を守る装置」か「暴力の象徴」か。
社会を二分してきた議論が凝縮されているかのようにもみえました。

一方でミツバチ(ミツバチかどうか不明ですが)は、受粉を担って生命を支える存在でありながら、刺せば自ら命を落とすという自己犠牲を伴います。生命を育む力と命を奪う力を併せ持つその姿は、武器の二面性と重なって見えます。

何のための武器なのか?それを分解してみると、そこには魂の無いただのメカニックな構造物があるだけ。
使い方次第の「銃」という無機物をめぐって、生命の象徴としての蜂が第三の道を示唆しているようにも見えます。

この構図が筆者が執筆していたクリントイーストウッドの映画「許されざる者」という記事のテーマ「二項対立は分断を生むだけ」という内容とイメージが重なり、この作品がとても深く印象に残ったのかもしれません。

ただし、ここで述べたことはあくまで私自身の解釈にすぎません。
観る人それぞれに異なる問いが立ち上がるはずです。

アートマーケットと遅めの昼食

ガーデンに出ていた模擬店でチキンドッグのような軽食を購入し、遅めの昼食。

立ったまま食べるだけでもその時点でへとへとでした。

公園には膨大な数のアートマーケットのブースが出ていて、面白そうなお店がずらり。

もっと元気があれば覗いて回りたかったのですが、すでに体力の限界。

少し見ているうちに、気づけばもう17時。疲れ果てて、そのまま岐路につきました。

まとめ——藝祭は“芸術の渦”に飛び込む体験

  • 絵画棟の展示は8フロアにわたる圧倒的ボリューム
  • 神輿は迫力のアート作品であり、裏には1年生の努力がある
  • アートマーケットは膨大な数のブースが立ち並び、面白い作品や食べ物が満載
  • 印象的な2つの作品との出会いは、偶然とご縁から生まれた体験

疲れてしまい、彫刻棟はみれずじまいだし、藝祭名物の法被コレクションまでたどり着けなかったのは残念でしたが、来年はもっと見てみたいと思います。
さらに今回は美術学部中心の鑑賞でしたので、次は彫刻棟や、ステージでの催し物や企画展、音楽学部の演奏会にも足を運んでみたいと感じました。(とても1日では無理ですが。)
藝祭はただの学園祭ではなく、まさに学生さんたちの創造のエネルギーが街全体に溢れる「芸術の祭り」でした。

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