東京藝術大学の学園祭「藝祭2025」。今年のテーマは「たまゆら」。
初日は台風で断念しましたが、翌日の土曜日に訪れることができました。キャンパス内外は想像以上の賑わいで、人の熱気に包まれていました。
神輿—キャンパスの外に広がる迫力
門の外の道路には、大迫力の神輿が3基並んでいました。どれも学生が制作したとは思えないほどの造形美で、近づくだけで圧倒されます。さすが藝大生!!

ガイドブックを記念に購入
会場ではガイドブック冊子(1000円)を購入しました。
道路に展示されていた神輿、「こんなのどうやって作っているんだろう?」と驚いていたのですが、購入したガイドブックをめくってみると、「神輿ができるまで」という紹介ページがありました。
そこには、1年生がひと夏をかけて苦労して制作する過程が写真付きでまとめられていました。展示を見た後に裏側を知ると、迫力だけでなく、汗と努力が込められた作品であることが一層伝わってきます。——「本当にお疲れ様です」と心の中でつぶやきました。
作品や展示の情報がまとまっていて便利なのはもちろん、後から思い返すための記念品としても嬉しい一冊です。藝祭を訪れる方にはおすすめです。
絵画棟を巡る—8フロアの圧倒的展示
私が足を運んだのは絵画棟。8フロアすべてが展示会場となり、さすが藝大と唸る作品が並んでいました。
シニアの私には全作品をじっくり見るのはとても無理。それでも「藝大生の今」を映し出す作品群に圧倒され続けました。
8階には梯子に登って外から覗く部屋があったのですが、列ができていたので、後で入ろうとスルーして一度外に出たのですが、遅い食事をとって疲れて休憩している間に終了時間に。結局見られなかったのが心残りです。
絵画棟で一番驚いたのは、人間マンホールになって横たわっていた女性の方の作品でした。
自らを作品の一部にするパフォーマンスアートは、現代アートの展示会などで見たことはありますが、「マンホールになってしまう」という発想とその姿には、やはりインパクトがありました。長時間その状態を続けていたことを思うと、「本当にお疲れ様です」と声をかけたくなるほど。何を表現していたのか伺いたかったのですが、行列に沿って無言で通り過ぎるだけで精一杯。若い女性の方でしたし、壁には「ギャラリーストーカーに注意」という貼り紙も多く見かけたので(笑)、あえて声をかけずに立ち去りました。
アートマーケットと遅めの昼食
展示を見続けていたら、昼食を逃してしまい、外に出たのは15時半ごろ。アートマーケットでチキンドッグのような軽食を購入し、立ったまま食べるだけでもその時点でへとへとでした。
特設ステージの前を通りがかると、ゲストトークショーが行われていました。予約が必要なので見れませんでしたが、ゲストはお笑いトリオの、ロバートの秋山さん。遠くにちらりと見えましたが、どんな話題だったんでしょうね。
どうやら、Youtubeでクリエイターさんを紹介するチャンネルを持っている関係で呼ばれたみたいです。なるほどね。
公園には膨大な数のアートマーケットのブースが出ていて、面白そうなお店がずらり。もっと元気があれば覗いて回りたかったのですが、すでに体力の限界。少し見ているうちに、気づけばもう17時。疲れ果てて、そのまま岐路につきました。
印象的だった2つの作品
今回ご紹介する2つの作品は、偶然の出会いと、ご本人からのご説明・掲載許可を頂けたご縁によるものです。どちらも「たまたま」ではありますが、自分の感性にマッチして面白いと感じられた作品でした。
作品その1:平田守さんのインスタレーション
公開講座でサポートスタッフをしてくださった平田さんの作品です。展示室で再会し、ご本人から少しだけコンセプトをお教えいただいたのですが、年のせいもあり完全には覚えきれず、誤って伝えてしまうといけません。
現代アートは、むしろ解釈の余白を楽しむものでもありますので、ここでは作品の説明は避け、写真だけ掲載させていただきます。スマホで撮影するとLEDがチカチカ点滅して映る仕掛けがあり、「カメラ越しだとチカチカ見えるLED」を意図的に選んでいるとのこと。肉眼ではわからなかった点滅がカメラ越しに見えると、何か神秘的な感じです。
白い壁の背景に白で9面のボードで構成してあること、右側の3面は角度がついて手前に折れていること、写真ではわかりづらいですが、ボードの表面に塗料のしずくがついたようなもの、木材の上に載せてあること…など、あるコンセプトに基づいて制作されている作品です。
インスタレーション的なコンセプチュアルアートなので、何かの表現であるのは当然と言えば当然ですが、ビジュアルだけみていても面白い作品です。
これが何を表現した作品なのか、また完成作品が気になる方は、ぜひ今後開催される平田さんの個展で体験してみてください。
Title:「Untitled」(平田守)
素材:木製の変形パネルにマウントした混紡キャンバス、LEDロープ、ジェルメディウム、複数のクランプ、蝶番、杉の柱材
作品その2:鈴木詠士さんの不思議なゲーム機と精緻な油彩画
もうひとつは、絵画棟7階で出会った作品。作者ご本人が会場に立たれており、直接お話を伺いながら鑑賞できました。
展示されていたのは、アクリルケースに電子部品を組み込んだ不思議なゲーム機。ボタンを押してもタイムラグがあり、思うように操作できず、もどかしさを体験することが目的のゲーム機でした。通常のゲームが「快感」を目指すのに対し、「うまくいかない感覚」そのものを作品化している点がユニークでした。
さらに壁には、精緻な油彩画が展示されていました。まるでCGのように緻密に描かれたライフルやエアガンの分解図。その一つには小さな蜂が数匹描かれており、作品タイトルは「擬態」。武器と生物が共存する不思議な世界に、思わず見入ってしまいました。
機械仕掛けの作品と精密な油彩画の両方を生み出せるマルチな才能。「今回はゲーム機と絵の関連はないものでしたが、今後は関連させた作品も構想中です」と話す鈴木さんの言葉が印象に残りました。
メカニカルな造形と生物的モチーフを掛け合わせた絵の世界観や不思議なメカニックの面白いテーマ、私は大好きです。
Instagram:https://www.instagram.com/age.suzuki/
まとめ——藝祭は“芸術の渦”に飛び込む体験
- 絵画棟の展示は8フロアにわたる圧倒的ボリューム。
- 神輿は迫力のアート作品であり、裏には1年生の努力がある。
- アートマーケットは膨大な数のブースが立ち並び、面白い作品や食べ物が満載。
- 印象的な2つの作品との出会いは、偶然とご縁から生まれた体験。
疲れてしまい、藝祭名物の法被コレクションまでたどり着けなかったのは残念でしたが、来年はぜひ最後まで見たいと思います。さらに今回は美術学部中心の鑑賞でしたので、次は音楽学部の演奏会やステージ企画にも足を運んでみたいと感じました。藝祭はただの学園祭ではなく、まさに学生さんたちの創造のエネルギーが街全体に溢れる「芸術の祭り」でした。
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