アートとは何か、現代アートとは何か?

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アートとは?ではなく、何がアートといわれているか?

皆様のNHKさんも、「アートとは?」という高校生向け講座をやってます。 さすが、基本を学ぶ上で、とてもわかりやすいですね。
しかし、この基本的な内容だけで日本や世界におけるアートの位置づけが全てが理解できるほどそう単純ではありません。
色々と考察した結果、最もしっくりときたArtstylic的な結論をここで書いておきます。

「アートとは何か?」という問いをすると、迷宮に入り込んで出口を探すことはできない。

答えが欲しいなら、時代や国等において、文化・社会学的に「何がアートと呼ばれて(評価されて、あるいは定義されて)きたか?」という問いをすべきだということ。

そして、その問いに対してであれば、迷宮とも言えるほどの膨大ではあるものの、文化的、歴史的なファクトという出口(答え)がある。

さらに「アート」という言葉を使う時、それはクリエイションにつける「分類ラベル」としての「アートの定義」なのか、アートという言葉の感性的な意味をあらわすほうの「アートの観念」なのか、まずその入り口で、どちらの「アート」の議論なのかを分けて考えるべきである。

作者だけが「これはポップアートなのだ!」と言い張る、缶バッジをフレームに収めただけのインテリア雑貨?ですが、これを「アート」と呼んでいいかどうか、と考えて議論すれば、「現代アート・ポップアートへの理解」が深まるはずです。

ここで、大事なことをを書いておきます。

アートに詳しくなかった私が最初に躓いたことがこれです。
「アートとは何か?」という問いと「現代アートとは何か?」という問いの大きな違いです。

これが、アートの初心者を混乱させます。 この両者に使われている「アート」という言葉が同じではないのです。
分かりやすく言えば「現代アート」は例えば「現代クリエイション」という一続きの単語、名詞だと思った方がいいでしょう。
「アート」と呼ばれているものの中の一つの分野が「現代アート」であり、「現代」の「アート」という意味ではないのです。 そこで、以下に「アート」と「現代アート」に分けてまとめておきます。


1. アートとは何か? – 分類ラベルとしての定義とその変遷

アートとは、視覚的な美を追求する行為だけにとどまらず、人々の感情や思考を喚起する手段でもあります。
古代から現代に至るまで、アートは常に時代ごとの価値観や文化を反映し、その形態を変化させてきました。

なお、ここでいう「アート」はわが日本で、和製英語として広範な意味で使われている「アート」についてです。
「アート」と学術的な「ART」は言葉の定義が異なりますので、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

「アートという言葉の定義と歴史」▶

 

1.1 アートの起源と定義

アートの起源は、人類の最も初期の表現活動にまで遡ります。 洞窟壁画や彫刻など、初期のアートは実用的な目的を持ちつつも、宗教的・儀式的な役割を果たしていたと考えられています。
時代が進むにつれて、アートは次第に美的表現として認識されるようになり、個人の創造性を重視する方向に進化していきました。

1.2 文化的・歴史的文脈の中でのアート

アートの定義は、時代や文化に応じて変化します。例えば、ヨーロッパのルネサンス時代では、アートは技術的な完成度や理想的な美を追求するものとして位置づけられました。
一方、東洋のアートは自然や精神的な表現に重きを置くことが多く、絵画や書道など独自の発展を遂げてきました。

アートが評価される基準も文化ごとに異なり、そのため「アートとは何か?」という問いに対する答えも、単一ではないことがわかります。


2. アートとは何か?という問いの意味

「アートとは何か?」という問いを立てることは、実際には迷宮に足を踏み入れるようなものです。
答えが一つではなく、無限の解釈が存在するためです。しかし、この問いに対しては、答えを見つけるために、文化や歴史的な観点を取り入れることが重要です。

2.1 文化・社会学的観点でのアート

「何がアートと呼ばれ、評価され、定義されてきたか?」という視点に立つことで、アートの歴史やその社会的役割を理解することができます。
アートは常に社会や政治の影響を受け、時には反体制的なメッセージを伝える手段としても用いられます。
アートが評価される基準も、時代や場所によって異なり、その意味合いを理解することが大切です。

2.2 アートの変化と進化

アートは時代ごとに異なるスタイルや技法を採用し、社会の変化と共に進化してきました。
古典的なアートは、写実的な表現を追求する一方、近代アートは抽象表現や実験的な手法を取り入れるようになりました。
このように、アートは時代ごとの文化や価値観を反映し、その定義が変遷していくことを理解することが大切です。

2.3 アートの本質~分類ラベルを超えたアートの意味

分類ラベル的な「アート」という言葉の定義ではなく、「アートの本質は何か」と言う視点で考えると、東京藝術大学の日比野学長の言葉によれば、アートの本質は「鑑賞者に心の揺らぎを生むもの」と言えそうです。

「アートってなんだろう? 〜東京藝術大学学長 日比野克彦先生〜」(大学ジャーナルONLINE)より引用 

“アートを見て人は感動するが、例えば油絵なら、ゴッホ、ピカソの絵も、物質的にはキャンバスに絵の具が塗ってあるだけ。それを見て感動するのは、絵がすごいのではなく、見た人がすごいからだ。感動とはこちら側、人間の中で、その気持ちが動くことだ。
だからアートって、揺らぎ、心が揺らいだ時に生まれるエネルギーみたいなものとも言える。”

「アート」という言葉の定義と歴史
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現代アートとは?

3.1 定義

「アートとは何か?」という問いに対して、「現代アートとは何か?」については、別の定義、意味があります。

「現代アート」とは、本来は第二次世界大戦後から現在に至るまでに生み出された芸術活動全般を指す言葉なのです。※
絵画や彫刻だけでなく、写真、映像、インスタレーション、パフォーマンス、さらにはデジタルやネットワークを用いた表現までを含む、広い時代的カテゴリーです。

※補足すると、「現代アート」という言葉の起点にはいくつかの見解があるようです。

  • 一般的な定義では、現代アートは第二次世界大戦後から現在に至るまでの芸術活動全般を指すものとされます。戦後社会の変化や国際化、テクノロジーの進展によってアートのあり方が大きく変わったため、ここを起点とする立場がもっとも広く用いられています。
  • 広義の使い方では、20世紀初頭(1900年以降)の美術を含めて「現代美術」と呼ぶケースもあります。ピカソやマティスのキュビスム、抽象表現主義など、モダンアートとされる領域までを含めて「現代」と位置づける言い方です。
  • より限定的な見解では、1960年代のポップアートやコンセプチュアルアート以降を「真の現代アートの始まり」とする場合もあります。この立場では、戦後すぐの抽象表現やアンフォルメルはモダンアートの延長とみなされます。

つまり、「現代アート」の範囲は文脈によって異なるため、とてもやたこしい用語です。美術史的には「モダンアート」と「コンテンポラリーアート」を区別する整理が主流ですが、展覧会や一般的な解説の場では両者を重ねて使うこともしばしばあります。


3.2 コンセプチュアルアートとの関係

ここでまず押さえておきたいのは、「現代アート=コンセプチュアルアート」と同義に扱われてしまう誤解です。

コンセプチュアルアートは1960年代に登場し、「アイデア(コンセプト)こそが作品の本質」という立場をとった芸術潮流です。ジョセフ・コスースやソル・ルウィットが代表的な作家です。

本来は現代アートの一部分に過ぎなかった芸術潮流ですが、実際には現代アート全体を代表するかのように語られてしまうことが多くあります。これは大衆の「現代アート=難解・観念的」というイメージに加え、専門家や美術展の現場でも便宜的にそう扱われる傾向が強いからです。

さらに問題を複雑にしているのは、「コンセプチュアルアート」という言葉自体が拡張されて使われている現状です。
たとえば、

  • アイデア性が強い作品全般
  • 難解で解説を必要とする表現
  • インスタレーションやパフォーマンスを含む広いジャンル

まで「コンセプチュアル」と呼ばれることがあります。
この拡張によって、「現代アート=コンセプチュアルアート」という同義化がさらに加速したのです。

現代アートの代表イメージとなったのは、従来の「美の基準」から外れた挑戦的なコンセプチュアルアートであり、その結果「現代アート=難解」という印象が社会に広く定着しました。実際にどちらの意味で語られているのかは、文脈の中で判断する必要があります。
そして現代社会で「アートとは何か?」と問うとき、多くの場合は「現代アートとは何か?」を問うていることが少なくありません。その答えもまた「現代アート」の説明にすり替わることで、用語の拡張は一般の鑑賞者にとっても混乱のもとになっているのです。


3.3 現代アートの特徴

このように言葉の使い方が拡張されて広まってしまった状況をふまえた上で、現代アートの特徴を改めて整理すると、その多様性にあるといえます。

多様性の具体例

  • 伝統の継承:油彩や具象表現を現代的に展開するデイヴィッド・ホックニー
  • 素材と歴史の探求:戦争や記憶を重厚な物質感で描くアンゼルム・キーファー
  • 大衆文化との接続:消費社会を映したアンディ・ウォーホル、村上隆
  • 身体性や参加性:パフォーマンスを通じて観客と関わるマリーナ・アブラモヴィッチ
  • 観念重視の試み:コンセプチュアルアートに代表される「アイデア中心」の表現

つまり現代アートは、「観念的なもの=コンセプチュアルアート」に限定されてしまいがちなイメージとは異なり、伝統・社会・文化・身体・観念といった多様な領域が共存しています。

現代アートの主流となったコンセプチュアルアートは従来の「美の基準」から外れることも多いため、「これはアートなのか?」という議論を常に呼び起こします。

既存の枠を壊し、新しい問いを提示することで、社会や観客に考える余地を与える、という意義を追求しているコンセプチュアルアートのイメージが、「現代アート」という言葉のイメージを代表してしまったというのが現在の実態で、厳密にどちらの意味で使われているかは、文脈の中で判断する必要があります。

そして、現代社会において「アートは何か?」と問う時は、多くの場合「現代アート」を指して問うている人が多い、そして、回答者も「現代アートとは何か」の答えを説明しがち、ということで、この用語の拡張が、私たち「アートに詳しくない大衆」をます混乱させていると言えます。

 

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NOTARTという視点

こうして見てきたように、「現代アート」という言葉は広すぎて伝統的な手法の絵画や彫刻まで含んでしまいます。
一方で「コンセプチュアルアート」という言葉は本来は限定的な潮流であるにもかかわらず、拡張されて使われることで、結果的に「現代アート」とほぼ同義に扱われてしまっています。

つまり、「なんでもあり(というわけではないですが)」の現代のクリエイション全体を包括的に示す適切な用語は、実は存在していないのです。

そこで有効になってくるのが、「NOTART(ノットアート)」という視点です。

NOTARTは、「これはアートではない」と否定されてきた表現を逆手にとり、あえてラベル化するものです。
この呼び名を使うことで、次のような利点があります。

  • 既存のラベルの限界を超える
    「現代アート」や「コンセプチュアルアート」の曖昧さにとらわれず、あらゆるクリエイションを包摂できる。
  • 境界を可視化する
    「アートかどうか」という線引き自体を問題提起に変えることで、観客や社会に新しい視点を投げかける。
  • 大衆と専門の間をつなぐ
    難解な美術史的用語に代わり、誰もが「これはアートか?」と問い直せる場をつくり出す。

ここで注意すべきなのは、NOTARTは学術的に確立した美術用語ではないという点です。
むしろそれは、現代アートとコンセプチュアルアートの混同や拡張を逆手にとって可視化し、批評的なラベルとして提示する試みです。
その意味でNOTARTは、デュシャンが「便器」を提示してアートの定義を揺さぶったように、「ラベルの再定義」を通じて現代のアート状況に新しい問いを投げかけるものだと言えるでしょう。

 4. アートの問いの先にあるもの

「アートとは何か?」という問いを深く考えることは、アート自体の理解を深めるだけでなく、社会や文化、そして人間の感情や思考に対する洞察を得る手助けとなります。
アートは単なる美の追求ではなく、時代の変化や人々の心情を反映する重要な要素なのです。

4.1 アートの社会的役割

アートは社会や文化に深く影響を与えるものです。時には社会の矛盾や不条理を描き、時には人々に希望や勇気を与えることがあります。
アートはその時々の社会状況を映し出し、人々に新たな視点を提供する役割を果たしています。

4.2 アートと個人の成長

アートを鑑賞することは、個人の感性を豊かにし、思考を深めることにもつながります。
アートを通じて、私たちは自己の感情や考えをより豊かに表現する方法を学び、他者との対話を深めることができます。
アートは、個人の成長と社会的な交流を促進する力を持っています。


まとめ

アートとは何かという問いには、単純な答えはありません。 その定義は、文化や時代、そして個々の視点によって異なります。
しかし、アートが人々の感情や思考を刺激し、社会に影響を与える力を持っていることは間違いありません。
現代アートにおいては、その枠を超えた表現が増え、評価も分かれることが多いですが、それもまたアートの多様性と挑戦的な性質の一部です。

「アートとは何か?」そして「現代アートとは何か?」という問いを追求することは、私たち自身の価値観や社会の成り立ちを見つめ直す良い機会であり、アートの持つ本質的な力を理解するための第一歩といえるでしょう。

追録:現代アートとコンテンポラリーアート、コンセプチュアルアートの違い

このようにアート初心者が「アートとは何か?」を深ぼりし始めると、「現代アート」「コンテンポラリーアート」「コンセプチュアルアート」といった似た言葉に次々に出てきて混乱します。
これらは互いに重なり合いながら使われるため、初心者にとって非常にややこしく、また、誤解を生みます。
本文の内容と重複する部分もありますが、本文の補記として記載しておきします。


現代アートとは?

  • 日本語でよく使われる「現代アート」は、今の時代に生きるアート全般を指す広い言葉。
  • 美術館やメディアでは「新しい感覚のアート」という意味で紹介されることが多い。
  • ただし学術的には「近代美術(Modern Art)」の後に続く、戦後以降の美術をまとめる言葉として使われる場合が多い。

コンテンポラリーアートとは?

  • 英語の Contemporary Art をそのままカタカナ化したもの。直訳は「同時代のアート」。
  • 美術史上はおおむね 1950年代以降〜現在 を指す。
  • 国際展や学術論文では標準用語で、日本語の「現代アート」とほぼ同じ意味で使われる。
  • 違いを強調する場合は、日本語の「現代アート」が曖昧に広がる一方で、「コンテンポラリーアート」は 美術史的な区切りを持つ専門用語

コンセプチュアルアートとは?

  • 「Conceptual art」は1960年代に登場した、「アイデア(概念)」こそが作品の本質とする芸術運動。
    学術的には1960年代から1970年代までの短い期間の前衛芸術のアートムーブメントとされている。
  • ソル・ルウィットやジョセフ・コスースが代表的で、「作る行為」や「物質性」よりも「思考・指示・概念」を重視する。
  • コンセプチュアルアートは コンテンポラリーアートの一部 に含まれるが、
  • 「現代アート=コンテンポラリーアート」と捉えると混乱しやすい。

つまり、「現代アートの中にコンテンポラリーアートがあり、その中にコンセプチュアルアートがある」と理解すると整理しやすい。

学術的にはコンセプチュアルアートは終わっているのか?

  • 運動としては終わっている
    1960〜70年代に展開された「コンセプチュアルアート」という潮流は、美術史的にすでに「歴史化」されています。現在はひとつの時代を象徴する運動として研究対象になっています。

  • 思想としては終わっていない
    「物質より概念を重視する」という発想は、その後のインスタレーション、パフォーマンス、メディアアート、さらにはAIアートにまで受け継がれています。学術的には「ポスト・コンセプチュアルアート」と呼ばれ、現代アートの基盤的思考方法となっています。

まとめると:「潮流としては終わったが、方法論としては現在も生き続けている」と言えます。


なぜややこしいのか?

  • 翻訳のズレ
    日本では「Contemporary Art」を「現代アート」と訳して定着させたため、言葉が曖昧に広がった。
  • 時代区分の重なり
    モダンアート(近代美術)とコンテンポラリーアートの区切りが国や文脈で違う。
  • 内部ジャンルの多様化
    コンセプチュアルアートをはじめ、ミニマルアート、パフォーマンスアートなどが現代アートの中で展開し、さらに細分化された。

「現代」という言葉や「概念的(コンセプチュアル)」のような単独の言葉の意味としてのイメージと学術的分類にやや違いがあるために、このような混乱が起きているのです。


まとめ

  • 現代アート=コンテンポラリーアート と考えておおむね問題ない。
  • ただし、美術史的には「モダンアート(近代美術)」と区別して、戦後以降を「コンテンポラリーアート」と呼ぶ。
  • さらにその中で「コンセプチュアルアート」などのジャンルが展開し、アートの定義そのものを問い直している。

このように、「現代アート」「コンテンポラリーアート」「コンセプチュアルアート」は、互いに重なりながらも役割の異なる言葉です。言葉の使い分けを意識すると、アートの議論や展覧会の理解がより深まります。

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