私のようなアート初心者の一般人が「アートとは何か?」というテーマに関心を持った時に、はじめに読むと面白くていろいろな示唆を与えてもらえる書籍をご紹介します。
それが、「ラッセンとは何だったのか?」という本です。
「ラッセンとは何だったのか?」
作者:原田 裕規
出版社:フィルムアート社
発売日:2013-06-26
なお、2024年2月に新たに3名の執筆者を迎えた増補改訂版が刊行されています。
本の内容は以下のようなものです。
『ラッセンとは何だったのか』
『ラッセンとは何だったのか』は、クリスチャン・ラッセンが日本で広く受容された理由とその文化的意義を多角的に探る作品です。
この書籍は、美術史や社会学、都市論、精神分析など多様な視点からラッセン現象を分析しています。
ラッセンの絵画は1990年代に日本で一世を風靡し、特に「ラッセン展」が全国150都市を巡回したことや、メディアミックスによる広報活動が功を奏して「国民的画家」として知られる存在となりました。
本書では、ラッセンが美術界の主流から外れる一方で、日本の消費文化や大衆芸術における象徴的存在として再定義される様子が描かれています。
また、2010年代に入り「お笑い」やネット文化を通じて新たな形で注目されたことや、その背景にある日本特有の文化的受容についても掘り下げています。
(感想)
ラッセンはアートと消費文化の狭間に位置し、その成功も批判も、彼の作品が多くの人々に感情的なインパクトを与えたことの裏返しだと思います。
本書の多角的な視点は、単なる美術批評を超え、文化的背景や社会の反応を含めて作品を再評価する重要性を教えてくれる点で非常に興味深いです。
ラッセンの作品が批評家から低評価を受けることが多い一方で、大衆の支持を集め続けてきた理由を知ることで、「アートとは何か」を考えるきっかけを与えてくれる一冊だと感じます。
この書籍そのものが「現代アート」という視点も!
こちらの新井文月さんの書評をご紹介しておきます。
【最後の箇所の抜粋】
「これまで美術の歴史は、コンテクストにより常に上書きされてきた。今回の起爆例はたまたまラッセンだが、この現象をきっかけにガラパゴス日本美術史の問題定義が生まれるだろう。本書の骨子はそこにある。従ってこれまでの文脈は破壊され、ラッセンはある時代を強烈に表した作品として美術史に残るよう再定義されるかもしれない。その意味で私は本書を現代アートと捉える。美術界の文脈上から淘汰されるのか、力強く生き残る作品とは何なのか。読みどころ満載な一冊。」
(「HONZ」『ラッセンとは何だったのか? ─消費とアートを越えた「先」』:書評著者~新井文月:https://honz.jp/articles/-/29425)