キュレーターとか学芸員って何なの?

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アートの舞台裏:キュレーターと学芸員の知られざる役割

アートフェアやアートサイト等で目にする「キュレーター」や「学芸員」とは?

アートフェアやアートサイトなどでよく耳にする「キュレーター」や「学芸員」という言葉。
何となくアートに関係する専門職だというイメージはあるものの、その実態を詳しく知る人は意外と少ないのではないでしょうか。
特にアートに詳しくない人にとっては、「一体何をする人たちなの?」という疑問が浮かぶことも少なくありません。
この記事では、そんな「キュレーター」と「学芸員」の役割や歴史、そして現代の課題について概略をまとめておきます。
(資格関係等の記述には正確性が保証できませんので、正確にしりたい方は文化庁のサイトなどでご確認ください。)


学芸員・キュレーターとは?

学芸員やキュレーターは、芸術や文化財の保存、研究、展示を通じて、文化を社会と結びつける役割を担う専門職です。
学芸員は日本では法律に基づく資格を持つ職業であり、主に美術館や博物館で働きます。
一方、キュレーターは展覧会やアートプロジェクトの企画運営を中心に行う職種として、国際的にも幅広く活動しています。


歴史的背景

古代–中世

古代や中世には、文化財や芸術作品は主に王族や宗教機関が管理していました。
これらの管理者は、現代の学芸員やキュレーターの先駆けといえる存在です。

  • 古代エジプトやギリシャ、ローマでは、神殿や宮殿で美術品や文化財を保管。
  • 中世ヨーロッパでは、教会や修道院が写本や宗教的美術品を保存し、司書や修道士が管理を担当。

近世–近代

近世に入ると、美術館や博物館が誕生し、現在の学芸員やキュレーターの基盤が形成されました。

  • ルネサンス期には、芸術や科学への関心が高まり、個人の収集物が美術館の原型となる「キャビネット・オブ・キュリオシティーズ(珍品陳列室)」として展示されました。
  • 18世紀末には、フランス革命後にルーヴル美術館が設立され、公共博物館が一般市民に開かれるようになりました。
  • 日本では、明治時代に西洋の博物館制度が導入され、学芸員の概念が定着しました。

現代

学芸員やキュレーターは、文化や芸術を通じて多様な価値観を共有し、デジタル技術を活用して新しい形の展示や教育活動を展開しています。
地域文化の活性化や社会問題への対応も重要な役割となっています。


主な役割

学芸員やキュレーターの役割は幅広く、以下のような業務があります。

  1. コレクション管理
    • 美術館や博物館の所蔵品を保存し、適切な環境で管理。
    • 修復やデジタルアーカイブ化などの作業。
  2. 展覧会の企画・運営
    • 作品のテーマに基づいた展示内容の企画。
    • 作家や他機関との調整、広報活動、資金調達など。
  3. 教育普及活動
    • ワークショップ、講演会、ガイドツアーを通じて観客との交流を図る。
    • 学校や地域団体との連携を進める。
  4. 研究活動
    • 美術品や文化財の歴史的背景、技術に関する研究。
    • 学術論文や書籍の執筆、専門家との情報交換。
  5. 社会との接続
    • アートを通じた社会課題の提起や地域活性化への貢献。
  6. 学芸員とキュレーターは似て非なるもの
    こういうのは実際に学芸員をやっておられる方の記事が一番参考になります。
    こちらの記事をご参考にどうぞ。
    「学芸員とキュレーターは似て非なるものなり」(小さな森の美術館の学芸員さん)


学芸員になるためには?

学芸員になるには、日本では学芸員資格を取得する必要があります。
この資格は国家資格ではなく、文部科学省が認定した資格で、所定の要件を満たすことで取得できます。
試験そのものはありませんが、必要な課程や要件を修了することが求められます。


学芸員資格の取得方法

以下の3つのルートがあります:

  1. 大学で学芸員課程を履修する
    • 文部科学省が指定する学芸員課程を設置している大学で、指定科目を履修し、必要単位を取得します。
    • 学芸員課程では、美術史、考古学、博物館学、文化財保護など、学芸員として必要な知識を学びます。
    • 単位取得後、卒業と同時に学芸員資格を得られます。
  2. 大学卒業後に学芸員資格認定講習を受講する
    • 学芸員課程がない大学を卒業した場合でも、文部科学省が認定する講習を受講し、単位を修得すれば資格を取得できます。
    • この講習は、主に社会人向けに提供されており、地方自治体や大学などが主催しています。
  3. 実務経験による資格取得
    • 大学で一定の科目(文化財や歴史学、美術史など)を修得し、その後、博物館や美術館で3年以上の実務経験を積むことで資格を得る方法です。

必要な科目(大学課程の場合)

学芸員課程で履修する主な科目は以下のようなものです。:

  • 博物館概論
  • 博物館資料論
  • 博物館経営論
  • 博物館情報・メディア論
  • 展示論 など

これらの科目では、展示企画の方法、資料の保存技術、博物館運営の基礎知識などが学べます。


学芸員になるための資格取得後の流れ

資格を取得した後、学芸員として働くためには、美術館や博物館に採用される必要があります。

  1. 就職活動
    • 学芸員資格を持つだけでは仕事に就くことはできません。多くの場合、美術館や博物館が実施する採用試験に合格する必要があります。
    • 特に公立施設では地方自治体の職員採用試験を受ける必要があります。この場合、「文化行政」や「教育行政」に関する知識も求められる場合があります。
  2. インターンシップやボランティア活動
    • 学芸員の仕事は実務経験が重視されるため、学生時代や資格取得後に博物館でインターンやボランティアとして働くことがキャリア形成に役立ちます。

学芸員の仕事に役立つスキルや知識

  • 専門的な知識
    美術史、考古学、文化財保護など、専門分野に特化した知識が重要です。
  • コミュニケーション力
    学芸員は多くの関係者と連携しながら仕事を進めるため、コミュニケーションスキルが求められます。
  • 外国語スキル
    特に海外の作家や作品と関わる機会が多い美術館では、英語をはじめとする外国語能力が必要になることがあります。
  • デジタルスキル
    最近では、デジタル展示やオンライン資料管理が重要になっており、ITスキルも重視されています。

学芸員になるための難易度や注意点

  • 競争率が高い 学芸員の職は数が限られており、特に正規職員のポストは競争が激しいです。
  • 専門分野の深化 一般的な資格取得だけでなく、自分の得意分野を明確にすることが就職に有利となります。たとえば、近代美術に強い、考古学に詳しい、などの差別化が必要です。
  • 資格取得だけでは不十分 学芸員資格はあくまで「スタートライン」です。その後のキャリア形成には、実務経験や独自の研究成果が求められます。

まとめ

学芸員になるには、学芸員資格を取得し、さらに美術館や博物館での採用試験を突破する必要があります。
資格取得後もスキルアップを続け、特定の分野での専門性を深めることで、学芸員としてのキャリアを築いていけるでしょう。
興味がある方は、大学の学芸員課程や地元の美術館・博物館で開催される講習会を調べてみると良いスタートが切れるはずです。

ご参考:文化庁「学芸員になるには」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bijutsukan_hakubutsukan/shinko/about/gakugeiin/


現代の課題

学芸員やキュレーターは多くの課題にも直面しています。

  1. 資金不足
    • 公立施設では予算の制約が大きく、展示企画や作品保存が難航する場合があります。
  2. 人材不足
    • 専門性の高い職種である一方、ポストが限られており、負担が大きい状況が続いています。
      一般的には高年収の職種ではないとされており、やりがいを感じてこの職を選ぶ人が多いようですが、能力や負担に応じた所得水準が望まれます。
  3. デジタル化対応
    • オンライン展示やバーチャルツアーの需要が増加する中、技術面での対応ができる人材の確保が課題です。
  4. 多様性とアクセスの向上
    • 異なる文化背景や価値観を取り入れ、幅広い層に対応するプログラム作りが求められています。
  5. 社会貢献の拡大
    • 芸術を通じて社会問題や環境問題にどう取り組むかが問われています。

今後の展望

学芸員やキュレーターは、芸術や文化の専門家として、地域社会や国際的なネットワークとの連携を強化し、新たな文化的価値を創出する役割が期待されています。
テクノロジーを活用した展示手法の開発、多様な観客層への対応、社会課題への貢献など、今後も進化が求められる職業です。
芸術と社会をつなぐ「架け橋」として、継続的に優秀な人材が集まるような仕組みが求められます。

 

ご参考:外部サイト「現代アートを理解するための100人 日本のキュレーター/評論家編①」(トライセラアート)

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