「アート」に対して「本格的かどうか※」という評価をすると、少し違和感があるかもしれません。
その理由として、アートは本質的に主観的なものであり、「本格的」の基準が曖昧で、個人の価値観や文化、背景に強く依存するためです。
ただし、我が国では「本格的なアート」という表現がまったく成立しないわけではなく、以下のような文脈で使われる場合があります。
1. 技術や形式の正統性を指す場合
- 「本格的なアート」と言うとき、クラシック絵画や伝統的な彫刻のように、歴史的に確立された技術や形式に則っているものを指すことがあります。
- 例: 「本格的な油絵」=技法や材料が伝統的で質が高い。
2. プロとしての完成度を指す場合
- 「本格的なアート」という表現が、アマチュアではなくプロフェッショナルとしての高い水準を表す場合もあります。
- 例: 「本格的なアート作品が展示されているギャラリー」=質の高い作品が並ぶ場。
3. 比喩的・感覚的に用いる場合
- 必ずしも技術や伝統に縛られない文脈で、「本格的」という言葉がアートに用いられる場合もあります。たとえば、「真剣に取り組んでいる」「深いメッセージや表現力がある」といったニュアンスで使われることがあります。
- 例: 「彼の作るアートは本格的だ」=真剣な表現が感じられる。
違和感の理由
アートは自由な自己表現や感性が重視される分野なので、「本格的」という言葉の持つ「正統性」や「基準に基づく」というニュアンスが必ずしもマッチしない場合があります。
そのため、代わりに「完成度が高い」「深みがある」「プロフェッショナルな」「洗練された」など、より具体的で柔軟な表現を使う方が適切な場合が多いです。
では、なぜ、このように日本では「本格的なアート」みたいな言い方が必要になっているのでしょうか?
それは、日本では和製英語的な「アート」という言葉が非常に幅広く使われており、芸術の枠を超えて日常的な事柄にも適用されることが多いためです。
こうした日本の「アート」という言葉の背景には、いくつかの文化的要因があると考えられます。
日本で「アート」が広範囲に使われる理由
- 美意識の多様性
- 日本文化では、日常の中に美を見出す感性が古くから根付いています。茶道や盆栽、料理など、「アート」と呼ばれることが多い活動が、実際には生活の一部として発展してきました。
- これが、「芸術=特別なもの」という意識を薄め、「アート」という言葉が広義で使われる土壌になっている可能性があります。
- 「アート」という言葉の輸入と解釈
- 外来語としての「アート」は、英語圏での狭義の意味(美術、芸術)にとどまらず、表現全般を指す言葉として解釈されています。
これにより、「何かを工夫して美しく仕上げたもの」は、容易に「アート」と呼ばれるようになりました。
- 外来語としての「アート」は、英語圏での狭義の意味(美術、芸術)にとどまらず、表現全般を指す言葉として解釈されています。
- マーケティングの影響
- 「アート」という言葉を使うことで、価値や魅力を付加する狙いが商業的に広がっています。
例えば、「アートな料理」「アートな空間デザイン」などがその例です。
- 「アート」という言葉を使うことで、価値や魅力を付加する狙いが商業的に広がっています。
「本格的」という区別用語が必要になった理由
- 表現のインフレ化
- 「アート」という言葉が広く使われすぎると、元々の意味が薄れ、「特別なもの」「本物らしさ」を伝えるために新たな区別用語が求められます。
「本格的」という言葉は、そのような背景で重宝されるようになったのかもしれません。
- 「アート」という言葉が広く使われすぎると、元々の意味が薄れ、「特別なもの」「本物らしさ」を伝えるために新たな区別用語が求められます。
- アートの多様化に伴う質の違い
- 現代アートの多様性や自由な表現により、観る人が何を「アート」と感じるかが大きく分かれるようになりました。
これに対し、「本格的」は、伝統や技術的な基準に基づいた評価を示すための言葉として使われることがあります。
- 現代アートの多様性や自由な表現により、観る人が何を「アート」と感じるかが大きく分かれるようになりました。
- 消費者の信頼を得るため
- 「アート」と呼ばれるものの中に、商業的な意図や品質のばらつきがあると、「本物かどうか」を確かめたいという消費者心理が生まれます。
その結果、「本格的」などの形容が追加され、質を保証する役割を果たしています。
- 「アート」と呼ばれるものの中に、商業的な意図や品質のばらつきがあると、「本物かどうか」を確かめたいという消費者心理が生まれます。
新たな区別の言葉が必要なら
ついつい、安易に「本格的」というワードを使いがちですが、もし「本格的」という言葉がしっくりこない場合、以下のような表現も考えられます。
- 伝統的な: 技法や文化に根ざしていることを強調する。
- プロフェッショナルな: 技術や完成度の高さを伝える。
- オリジナルな: 独創性を重視する。
- 本質的な: 深みや真の価値を強調する。
これにより、「アート」の中で異なる基準を明確にしつつ、新たな価値観を示すことができるかもしれません。
いかがでしょうか?
他にもいろいろな表現ができるかもしれませんね。
※「本格的」という言葉についてもご説明しておきます。
「本格的」(ほんかくてき)という言葉は、以下のようなニュアンスを持っています:
- 本来の形式や基準に従っている
- その分野や物事において、正統的で本物らしいという意味です。
- 例: 「本格的な日本料理」=伝統的な日本料理の調理法や材料を使ったもの。
- 本物である、質が高い
- 模倣や表面的なものではなく、しっかりとした質を持っているという意味。
- 例: 「本格的な革製品」=高品質で本物の革を使用した製品。
- 本気で取り組んでいる
- 本腰を入れて、真剣に取り組むことを表します。
- 例: 「本格的に勉強を始める」=計画的にしっかりと勉強を始める。
文脈によって少し意味合いが変わりますが、「しっかりした、本物志向、真剣」という共通点があります。
さて、最後に、今まで「本格的アート」ってとても高価で手が出ない、大きくて飾る場所がない、などと思われている方に
気軽に、玄関やご自分の部屋にも飾れる小さな「本格的アート」をご紹介しておきます。
それがラベルをモチーフにした立体画ポップアートの「Pop Art Deco」シリーズです。