ハプニング!?~「アート」とつかないアート用語

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新時代の「ポップアート」~アートの言葉はもう不要に!?

はじめに

近年、「アート」に興味が薄いと感じる人々でも足を運びたくなるようなイベントとして、音と光に包まれた空間を楽しむインスタレーションが人気を集めています。
この形式のイベントは、現代的で新しい試みのように見えますが、そのルーツは1970年代のピンク・フロイドをはじめとする先進的で実験的なロックバンドのコンサートに、そして、さらに「ハプニング」というアート形態にまでさかのぼります。

当時のロックコンサートは、「アート」ではなく「音楽イベント」として語られてきましたし、今でも、「コンサート」であって「アートイベント」であったと評価されることは殆どありません。
しかし、音楽、文学、映像といったメディアと伝統的なアートの境界が曖昧になりつつある現在、「インスタレーション・アート」と「パフォーマンス・アート」の垣根も次第に薄れています。

もし「体験型」「参加型」を特徴とするインスタレーションがアートとされるならば、同様に音と光や造形で空間を演出するロックコンサートを「アート」と呼ばない理由は何なのでしょうか。
この問いかけこそが、令和という時代において私たちが立ち向かう「現代アート」の分岐点を象徴しているように思われます。
こうした視点から、新たな時代の「ポップアート」と呼べるアートの形態を模索する動きを考察していきます。
そして、こうしたポップアートの進化形態には、「コンサート・アート」と呼ぶ必要が無いように、もはや「アート」というブランド名は不要になるかもしれません。

最後に、「コンサート」が「コンサート」であるように、「アート」とつかないアート用語、パフォーマンスアートの起源とされている「ハプニング」というアートについてもご紹介しておきます。
そう、普段、アート用語と認識せずに使っている言葉、あの「ハプニング」です。


岡本太郎、アンディ・ウォーホル、オノ・ヨーコ、そしてピンク・フロイドを取り上げる理由

岡本太郎は「アートは大衆のためにあるべきだ」という理念を掲げ、アートを特権的なものから解放しました。
この思想は、アンディ・ウォーホルのポップアート、そしてオノ・ヨーコとジョン・レノンの「イマジン」ピンク・フロイドが創り出した音と光の体験型コンサート、といった大衆参加型のアートに受け継がれているとも言えます。

ポップアートを起点とするこれらの試みは、大衆と知的層の融合を目指し、テクノロジーやインスタレーションを取り入れた体験型アートへと進化しています。
このように、大衆向けの感性を重視したアートは、新しい可能性を模索する中で常に変化を続けています。

一方、一般的なアート専門サイト等では、岡本太郎やアンディ・ウォーホル、オノ・ヨーコといった人物は取り上げられても、ピンク・フロイドのようなロックバンドが登場することはまずありません。
アートの境界が曖昧になったとされる一方で、音楽イベントがインスタレーションに先立ち、「アートのような空間体験」を提供してきた事実は、アートの専門家にとっては「アートの一形態」とは認識されていないのです。


現代アートにおけるエリート主義の壁を打ち破る複合型イベント

言葉の上では「アートの境界は曖昧になった」と語られていますが、エリート的現代アートの世界では、ロックコンサートは「アート」ではなく「音楽コンサート」という枠組みに押し込められています。
新しい時代のアートは、こうした固定観念を打ち破り、音楽や映像、空間演出が一体となった大衆向けの音楽コンサート等も、大きな社会的メッセージやムーブメントを起こせる可能性のある「体験型・参加型アート」の一分野として再定義する必要があるかもしれません。
そして、私たちが新たに迎えるべき「ポップアート」の未来は、より多くの人々が参加し共感できる、大衆と知性の融合によって切り拓かれていくはずです。
実際に、既にコンサートとアートフェアを統合した複合型のイベントも開催されています。


1. アートを体験し、完成させるという思想

例えば、身近な例でいえば、購入者がアートに直接関わる「インテリアアートに自分の手を加える」というコンセプトも、大衆文化におけるアートと生活の新たな融合を示唆しています。

1.1 オノ・ヨーコの「参加型アート」からの発展

オノ・ヨーコの『グレープフルーツ』では、観る者が作品を完成させるというコンセプトが提示されました。

  • 「想像力を使うアート」
    観客が指示に従って行動したり想像したりすることで、アートが完成します。
    この方法論は、インスタレーション等の空間アートでも、観客の動きに連動させるような参加型アートとして直接影響を与えています。
  • 例:願いを加える《ウィッシュツリー》
    観客が紙に願い事を書き、木に吊るすことで完成する作品。観客の行為が作品を変化させ続けます。

1.2 インテリアアートに購入者が関わるアイデア

「参加型アート」をより身近なものにするアイデアとして、インテリアアートに購入者自身が「手を加える」ことを許容する作品が考えられます。
この方法は、日常生活とアートの垣根を取り払い、アートを個人的で特別なものに変えます。

  • アイデア例 1:パーソナライズ可能な壁アート
    壁に設置されたインタラクティブなパネルに、購入者がマーカーやスタンプを使って自分のアイデアや言葉を書き込むことで、作品が完成します。

    • アートの一部に余白を残し、購入者が好きなメッセージやイラストを加える仕組み。
    • 年月とともに変化する、家族の記録としての役割も。
  • アイデア例 2:塗り絵型のアート作品
    購入者が一部を塗りつぶすことで完成するアート。たとえば、グラデーションや色の選択が自由にできる作品。

    • 抽象的なデザインを用い、自由度を高める。
  • アイデア例 3:LEDライトと文字の融合アート
    デジタルアートにLEDライトを組み込むことで、購入者がメッセージをプログラムしたり変更したりできる作品。

    • 音と光と文字が共鳴するようなインテリアアート作品。

2. 大衆がアートに直接参加する意味

2.1 大衆参加型アートの魅力

観るだけでなく、アートに触れ、完成させるという行為は、観客にとってアートの一部になる体験を提供します。
これにより、以下のような効果が期待されます。

  • 感情的なつながり
    アートを自分自身で完成させることで、購入者にとって作品が特別な意味を持ちます。
  • インタラクションの楽しさ
    子どもから大人まで楽しめるプロセスが、アートへの関心を広げます。

2.2 社会的なつながりを生むアート

インテリアアートとして、家族や友人が共同で手を加える形式は、アートを通じて社会的なつながりを深めることができます。

  • 「家族で完成させるアート」
    一枚のキャンバスに、家族全員が日々の記録やメッセージを描き足していく作品。

    • 家庭内で育まれる一体感を演出。
    • 世代を超えた共有財産としてのアート。


3. 次世代ポップアートとインテリアアートの融合

3.1 テクノロジーとの組み合わせ

次世代ポップアートでは、AIやデジタル技術を活用してインタラクティブ性をさらに高めることができます。

  • AIが参加者の手書きやデザインを変化させるアート
    書き加えた内容をAIが解析し、パターンや色彩を自動的にアート全体に反映する作品。
  • スマートインテリアアート
    購入者がスマートフォンやタブレットを使って、インタラクティブにメッセージやデザインを変更できる壁アート。
    たとえば、ピンク・フロイドのコンサートのような動的なプロジェクションを自宅で再現することも可能な時代です。

3.2 持続的に変化するアート

オノ・ヨーコのように、観る者や購入者の行為によってアートが変化し続ける仕組みは、アートの時間的な持続性を強調します。

  • アイデア:「メモリーキャンバス」
    購入者が日々の記録を残せるアート作品。タッチスクリーンやホワイトボード素材を使用し、更新し続けることで常に進化するインテリアアート。

4. まとめ~次世代ポップアートは「アート」と呼ぶ必要もなくなる!?

岡本太郎の「アートは大衆のためにこそ」、ピンク・フロイドの空間演出、アンディ・ウォーホルのポップアート、そしてオノ・ヨーコとジョン・レノンの「イマジン」は、アートが大衆を巻き込み、時代とともに変化するものであることを示してきました。

次世代ポップアートは、これらの要素を統合し、次のような新しい形を生み出すはずです。

  1. 親しみやすさと挑戦の融合
    大衆が気軽に手を加えられるインテリアアートが、アートへの敷居を下げる一方で、社会課題や哲学的テーマを含むことで深みを与えます。
  2. インタラクションと体験の進化
    購入者がアートに触れ、体験し、変化させることを通じて、アートの意味が再定義されます。
  3. 日常生活との融合
    家庭や日常空間に溶け込むインテリアアートが、アートを特別なものではなく、日常の中で共有し楽しむものに変えていきます。

アートは、観るだけのものではなく、参加し、創り上げ、体験するものへと進化しています。
それは、大衆の中にアートの可能性を広げ、私たちの日常を新しい視点で彩る未来を示しています。

しかし、大衆に広く受け入れられるこれらの形態は、「コンサート」が「コンサート」と呼ばれるだけのように、もはや「アート」というワードをわざわざつけて価値のブランド化をする必要性は無いのではないでしょうか?
東京ドームを満員にするようなロックやポップミュージックのコンサートは「アート」というワードをつけずとも、決して安くはないチケットが飛ぶように売れてしまいます。
次世代の「ポップアート」は、「現代アート」からさらに大きく乖離して「アート」という言葉から解放されて、「アート」ではないもの=「ノットアート」に進化していくべきなのかもしれません。

 


さいごに

リンクサイトでは、パフォーマンスアートの起源となったとされる「ハプニング」と呼ばれているアート様式をご紹介しておきます。

「ハプニング (Happening)」は、1950年代末から1960年代にかけてアメリカを中心に発展したアート様式で、従来の芸術の枠を超えた即興性や観客参加型のパフォーマンスに焦点を当てています。
アーティストのアラン・カプロー(Allan Kaprow)がその概念を提唱し、言葉としても広まりました。

主な特徴は以下の通りです:

  1. 即興性:事前に詳細な台本や計画を設けず、その場の状況や偶然性を重視します。
  2. 観客の参加:観客は単なる鑑賞者ではなく、イベントの一部としてアクションに参加します。
  3. 複合的なメディア:絵画や彫刻、音楽、ダンス、演劇など、さまざまな芸術形式が融合します。
  4. 特定の場所や時間に依存:美術館やギャラリーだけでなく、日常空間や公共の場など、非伝統的な場所で行われることが多いです。
  5. 芸術と日常の境界の消失:ハプニングでは、日常の出来事や行動そのものがアートとして提示されます。

ハプニングは、その後のパフォーマンスアートやコンテンポラリーアートに大きな影響を与え、芸術の枠組みを再定義するきっかけとなりました。

また、オノヨーコだけでなく、「ハプニング」に関連する日本の世界的な現代アートの作家がいます。
それが「草間彌生」です。
「草間彌生」については、ここでついで書き程度で終われないので、ここでは、外部サイトのご紹介のみにとどめておきます。
「若い頃の草間彌生はアクティブな美女!前衛芸術の女王になった秘密とは?」(翠波画廊 SUIHA Gallery)

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