「神は細部に宿る」という言葉は、建築業界では「ミース・ファンデルローエ」の言葉として有名ですが、誰が最初に言ったか、ということについては諸説あり、厳密には作者不詳、ということのようです。
この言葉の元の意味は、偉大な芸術作品の多くは細部にまでこだわって緻密に作られており、その総体として作品全体が美しく仕上がっていることから、「美の神は細部に宿る」という言葉につながっています。
一見、大胆で豪放なイメージの作品であっても、実は、細部まで神経を尖らせて作られていたりします。
一般社会や普通の生活においては、「細部にこだわるのは神経質すぎる」という感じで否定的な意味で使われることも多いですが、芸術等の世界では、「細部へのこだわり」ができない、それが苦痛だという人には、なかなか人を感動させる美しい作品を生み出すことは難しいということかもしれません。
しかし、面白いことに、一般生活では全く細かいことは気にしないような人が、いざ、芸術的なことに取り組むと、驚くほど繊細で細部までこだわった作品を作ったりします。
問題なのは、芸術と違って、商業デザインのような費用対効果の制約があるクリエイティブ制作では、一定の時間内に作品を仕上げなければならないので、そこまで細部にこだわっていては間に合わない、とか、もらった報酬に対して制作にかかる時間が多すぎる、といったビジネス上の壁にぶつかる場合です。
それでも、自分で納得できないレベルのクリエイティブを納品することは絶対にできない、というのが本当のプロフェッショナル精神かと思います。
クリエイティブ制作においても「細部にこだわる」というのは、手間と時間がかかることですが、デザインのような世界では、使いこなすツール等の一定のスキルを身に着けることで、こうした手間と時間を短縮できます。
プロフェッショナルという人たちは、細部までこだわって全体クオリティをハイレベルに仕上げるマインドと、それを実現する匠のスキルを磨き上げた人たち、ということでしょう。