アート作品の額縁選び:アクリルとガラスの違いとは

ART LABO

アート作品を長期間美しく保存し、展示するためには、額縁の選び方が非常に重要です。
額縁の表面カバーとして使用される素材は、作品の保存性や視覚的な効果に大きな影響を与えます。
特に、アクリルガラスは、額縁におけるフレーム部分の種類とともに、重要な選択肢のひとつであり、それぞれに異なる特性があります。
アクリル、と聞くとガラスより低級な素材のイメージがあるかもしれませんが、塩ビやポリカと違い、むしろガラスの上位互換の素材とされています。
一方、ガラスは、透明度が高い等の長所がアクリルを上回るため、どちらが適しているのか、それぞれの特徴を理解して、作品に応じた最適な選択をすることが必要です。
本記事では、アクリルとガラスの違い、そしてそれぞれが適している作品について詳しく説明します


1. アクリルの利点

1.1 アクリルはガラスの上位互換

アクリルはガラスに比べて軽量でありながら強度が高く、割れにくいという特徴があります。
このため、特に大きな額縁の場合、アクリルを選ぶことで破損のリスクを減らすことができます。
また、アクリルは経年劣化による変色や変形が少なく、長期間にわたってその性能を維持することができます。

1.2 平面性と歪みの防止

アクリルはガラスほど硬くはないものの、平面性が非常に高く、額縁が大きくてもたわみや歪みが生じにくいです。
これにより、作品が額縁内で不安定になることなく、常に整った状態で展示できます。


2. 紫外線カット効果

2.1 UVカット効果の重要性

アート作品や写真は紫外線(UV)の影響を受けることで、色があせたり、劣化が進行したりします。
アクリルは、素材自体にUVカットの性質を持っており、室内紫外線の約90%をカットすることができます。
これにより、アクリルを表面カバーとして使用することで、作品を紫外線から守り、その鮮やかな色を長期間保つことができます。

2.2 紫外線から守る重要性

特に貴重な美術品や写真、印刷物を展示する場合、紫外線対策は非常に重要です。
アクリルを使用することで、日焼けによる色あせや変色を防ぎ、作品を美しい状態で保存できます。
額縁の表面カバーをアクリルにすることで、保存性が格段に向上します。


3. アクリルのメンテナンスと耐久性

3.1 傷が付きにくく、曇りにくい

アクリルの最大の利点の一つは、その耐久性です。アクリル表面に傷がついて曇ってしまうのではないかという懸念がありますが、実際には通常の使用ではそのような問題はほとんど発生しません。
額縁を普通に飾っているだけでアクリルに傷がつくことはなく、日常的な掃除を行う際には柔らかい布で拭くだけで十分です。

3.2 塩ビやPETとの違い

アクリルと混同されがちな素材に「塩ビ」や「PET」がありますが、これらはアクリルとは全く異なる素材です。塩ビやPETは、アクリルよりも傷がつきやすく、変色や劣化が進みやすいことが多いです。アクリルは、硬い物でこすらない限り、自然に傷がついて曇ることはほとんどありません。したがって、アクリル製の額縁は長期間にわたって美しい状態を保ちます。(詳細は下記6をご覧ください。)

4. アクリルを使った額縁の選び方

4.1 アクリルの厚さとサイズ選び

アクリル額縁の厚さは、額縁の耐久性や安定性に大きな影響を与えます。
特に、大きなアート作品を展示する場合、適切な厚さを選ぶことが重要です。
一般的に、厚さ3mmから5mmのアクリルが標準的で、多くのサイズや重量のアートに適しています。
厚さが増すほど、額縁は堅牢で安定し、大きな作品にも対応できます。

例えば、小さなアートワークや軽量の写真などには2mm〜3mmのアクリルが適しており、軽やかな外観を提供します。
逆に、大きなアートや重いキャンバスプリントには、6mm〜8mm以上の厚さが適しています。
これにより、アート作品が時間の経過とともに反ったり、曲がったりするのを防ぎます。
厚みが増すと値段も高価になっていきますので、作品と額縁のコストバランスも考慮しながら選ぶ必要もあります。

4.2 UVカット機能を備えたアクリルを選ぶ

額縁の選び方として、UVカット機能を備えたアクリルを選ぶことが非常に重要です。
アクリルには標準的なものとUVカット機能が付いたものがありますが、特に保存性が重要な作品には、紫外線を99%以上カットできるUVカットアクリルを選ぶとよいでしょう。
これにより、作品の色あせや劣化を防ぎ、長期的な保存が可能になります。


5. ガラスを選んで良い作品とは?

5.1 光の反射や視覚的効果を重視する作品

ガラスは非常に透明度が高く、アクリルと比較して光の反射を防ぎやすいという特性があります。
このため、作品の色やディテールが最も鮮明に見えることを重視する場合、ガラスが適しています。
特に写真や細密画など、精緻なディテールが重要な作品では、ガラスのクリアな表現が作品をより美しく見せます。

5.2 軽量性や耐久性をそれほど重視しない場合

アクリルは軽量で割れにくい特徴がありますが、ガラスも耐久性が高く、特に小型のアート作品やポートレートなど、重量がそれほど問題にならない場合には、ガラスを選ぶことで高級感を出すことができます。

5.3 額縁のデザインに合わせて選ぶ作品

ガラスはクラシックでエレガントな額縁デザインと非常に相性が良いです。
アンティーク風や重厚感のあるフレームには、ガラスのシンプルで洗練された透明感がよく合います。
伝統的なアートスタイルや古典的な絵画には、ガラスの方が作品の雰囲気に調和しやすいです。

5.4 コスト面でアクリルを選びにくい場合

アクリルは高機能な素材であるため、通常ガラスよりも価格が高くなることがあります。
コストを抑えたい場合、予算が限られている状況でガラスを選ぶことが合理的な選択肢になる場合があります。

5.5 紫外線の影響を比較的受けにくい作品

紫外線(UV)に敏感な作品、特に写真や水彩画などは、UVカット機能があるアクリルを使用することで保存性を高めることができます。
しかし、ガラスでもUVカット機能付きのガラスが販売されており、このタイプのガラスを選べば、紫外線の影響を抑えることができます。
UVカットガラスは、通常のガラスよりも若干高価ですが、紫外線が強い地域長期間の保存が必要な場合に有効です。

6. アクリル、塩ビ、ポリカの違いとアクリルが高価な理由

6.1 アクリルの特徴

アクリルは非常に透明度が高く、色の鮮明さや視覚的効果を最大化します。
アクリルは耐衝撃性があり、割れにくいという特徴があります。
また、UVカット機能を持つ製品もあり、アートや写真などの長期保存に適しています。これにより、アクリルは美術品や貴重な展示物に最適です。

6.2 塩ビ(PVC)の特徴

塩ビは、非常に安価であり、柔軟性が高いですが、透明度はアクリルに劣ります。
塩ビは紫外線に弱く、長期間使用すると変色しやすいです。
価格を抑えたい場合に選ばれますが、美術品の保存には不向きです。

6.3 ポリカーボネート(ポリカ)の特徴

ポリカーボネート(ポリカ)は、非常に強い耐衝撃性を持ち、割れにくいという特徴があります。
しかし、透明度はアクリルに劣り、光の反射が気になる場合もあります。
UVカット機能もありますが、アクリルほど効果的ではありません。安全性を重視した場合に選ばれます。

6.4 アクリルが高価な理由

アクリルが高価である主な理由は、その透明度、耐久性、UVカット機能にあります。
アクリルは製造工程が複雑で、特に高品質なアクリルは高い技術と精製が必要であり、その分コストがかかります。
アクリルはまた、長期間の使用に耐えるため、作品の保存性を高めるために高価な価格設定となっています。


7. まとめ

アクリルを使用した額縁は、その軽量さ、耐久性、紫外線カット効果など、非常に実用的で優れた選択肢です。
特に美術品や写真、重要な印刷物を長期間保護したい場合、アクリルを使った額縁を選ぶことが最適です。
アクリルはガラスの上位互換として、多くの利点を提供し、作品を傷や紫外線から守り、長期的に美しい状態を保つことができます。
しかし、ガラスも非常に優れた選択肢であり、作品の特性や展示環境によってはガラスを選ぶ方が適している場合もあります。
最終的には、作品の保存性や展示場所、予算を考慮して最も適した素材を選ぶことが大切です。

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